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ナデック通信

2021年9月号

「令和4年度に向けた派遣法の労使協定締結のポイントは?」

派遣法の不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)は、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の2方式があり、派遣元がいずれかを選択することになっています。

法律上の原則は均等・均衡方式ですが、実際に選択されているのは労使協定方式が圧倒的に多く、この場合は毎年の局長通達で示される「一般賃金」の水準を守らなければなりません。

局長通達は毎年6~7月頃に公開されることになっていますが、令和4年度の局長通達はすでに発表されています。すでに来年度に向けた実務対応が始まっています。

令和4年度の一般賃金については、いくつかの変更点や実務上注意すべき点がありますので、今月号ではそれらのポイントを簡潔にまとめてみたいと思います。

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

(1)「例外的取扱い」の廃止

令和3年度には一定の要件を満たす場合に前年度水準に据え置くことが認められる「例外的取扱い」が置かれましたが、令和4年度には置かれません。

一般賃金の数値は2年前の統計から導かれることになりますが、令和2年の統計はすでにコロナ禍の影響を反映しており、派遣労働者の雇用状況も、令和3年の雇用者数が前年同月、前々年同月ともに増加、新規求人数も前年同月比が増加傾向にあることから、据え置きの措置は必要ないと判断されました。

ただし、令和3年に例外的取扱いを適用した場合は、令和4年に同様の措置を受けることはできませんが、令和4年の事業報告書で令和3年に適用した措置について報告する必要がある点は注意しましょう。

(2)一般賃金の基準値

一般賃金は賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計をベースに決定されますが、前者は前年の水準より13円、後者は12円のプラスとなっています。

両統計ともに職種によって上がるものと下がるものがありますが、全体的には前年よりも引き上げ傾向にありますので、早い段階で職種ごとの水準をしっかり確認しておく必要があります。

なお、令和3年度は過去3年分の統計値から一般賃金の水準を算出していましたが、令和4年度は賃金構造基本統計調査で職種区分の変更によって全職種の過去3年分の統計値からの算出が困難となったため、令和2年分の統計値から算出した賃金水準を一般賃金水準としています。

(3)能力・経験調整指数

能力・経験調整指数については、全体として勤続年数ごとの能力・経験調整数の上げ幅は緩やかになっており、0年目の基準値のみが上昇しています。

1~20年目は全体として引き下げとなっていますので、この傾向をつかんで数値の当てはめを行っていくことになります。

令和4年度の一般賃金については、まずこの全体的な傾向をつかんだ上で、
それぞれの項目や職種ごとの数値の当てはめを行っていきたいものです。

(4)一般通勤手当

一般通勤手当は74円から71円に引き下げになっています。

所定労働時間が8時間、週5日勤務の場合は、71円×8h×5日×52週÷12か月=12,306円となり、同額もしくはそれ以上の実際にかかった交通費を毎月支給することになります。

通勤手当の水準について、実態に応じて労使協定、雇用契約の書き換えを行うことになります。

(5)退職金制度

退職金については、退職金前払い、中退共等、退職金制度の3種類がありますが(このうち前払いと中退共等は併用可能)、このうち退職金制度の基準のひとつである「中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」について、数値が更新されています。

具体的には数値が全体としてやや低くなったため、局長通達の仕組みとしては退職金制度の修正や変更も理論的には可能となりますが、この場合は就業規則(退職金規程)の変更や不利益変更の要素にも十分に留意する必要があります。

労使協定方式の退職金については、施行時には退職金制度を選択する派遣元はそれほど多くはなかったかもしれませんが、必ずしもそうした判断のみとは限らない時代に変わってきている気もします。

(6)その他の変更点

令和4年度の一般賃金の数値の全体像は、以下のような内容になっています。

①賞与指数  0.02(変更なし)
②能力・経験調整指数  変更
③学歴初任給との調整  12.6%→12.7%
④一般通勤手当  74円→71円
⑤退職手当  「中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」のみ更新
⑥退職金割合  6%(変更なし)

コロナ禍の影響で労働局の調査などは縮小傾向にあり、特に緊急事態宣言が出されている地域では延期などの状況も増えていますが、逆にその分テーマをしぼって集中的に指導監督が行われています。

しかし、頻繁に改正される派遣法の運営状況についての行政の関心は高いため、許可更新時の調査などが厳しくなるなどの傾向が強まってきているともいえます。

最近の調査では、派遣法改正の内容もさることながら、労使協定方式の運営状況や労使協定書が厳しくチェックされる場面が増えているように感じます。

令和4年の局長通達が発表されて、来年度に労使協定の締結に向けて派遣労働者の賃金設定や派遣先との料金交渉などをすすめる時期ですが、新しい一般賃金が発表されたことで行政からのチェックの目線も強まることが予想されるため、いつ指導監督を受けても万全の説明と対応がとれるような日ごろからの実務の流れを構築しておくことが肝要です。

労使協定方式がスタートして3年目となって制度はさらに複雑となっていますので、労使協定に締結・更新を通じて派遣元としての実務を整然と再整理していきたいものです。

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